仕事は真心を込めて、ラブレターを書く気持ちで、愛を持ってやりなさい。
令和7年4月12日、弊社に多大な貢献をされた熊倉桂三氏がご逝去されてから三回忌を迎えます。この節目にあたり、改めて氏への追悼の意を込め、弊社との関わりについてお話しさせていただきます。
時代の変化やニーズに応じて挑戦し続けることを選んだ弊社ですが、製版から印刷業へと転身し、多くの賞を受賞するまでの成長の過程において、熊倉桂三氏の存在を抜きに語ることはできません。彼が遺した言葉は、弊社の歩みに深く根ざし、その発展を支えてきました。

1947年(昭和22年)東京都港区青山生まれ。凸版印刷を経て、2007年1月より株式会社 山田写真製版所 入社。約55年にわたり印刷業に携わり、グラフィックデザイナーや、フォトグラファーなど、多くのクリエイターとともに共同作業で作品を生み出してきました。
熊倉が入社した2007年当時、弊社は製版を得意としながらも、美術印刷の受注は現在ほど多くはありませんでした。しかし、その後十数年にわたり熊倉がたゆまぬ努力を重ねた結果、弊社は数多くのお客さまが印刷立ち合いに訪れる国内有数の印刷会社へと成長し、日本一の賞を頂けるまでになりました。

熊倉は、高い技術力だけでなく、ものづくりの精神を社員に伝え続けてきました。
まず、「きれいな印刷物は、きれいなマシンからしか生まれない」という信念のもと、常に機械を清潔に保つよう指示しました。また、「仕事は真心を込めて、ラブレターを書く気持ちで、愛を持ってやりなさい。」と、仕事に対する姿勢についても常に語りかけていました。
その教えは社員だけにとどまらず、次世代へと知識や技術を受け継ぐために、学生やデザイナーを対象とした授業や勉強会にも精力的に取り組みました。その努力が実を結び、今まさに新たな芽が育ち始めていることを実感しています。

プリンティングディレクターの役割は、デザイナーやクライアントが印刷物を通じて何を伝えたいのか、どのような表現を大切にしているのかを見極め、それを実現するために最適な製版・印刷の設計とディレクションを行うことです。
紙やインクには膨大な種類があり、その組み合わせによって仕上がりは無限に広がります。プリンティングディレクターは、デザイナーと印刷現場をつなぎ、最適な仕上がりへと導く重要な役割を担っています。そのためには、製版・印刷・素材に精通し、デザイナーの意図を瞬時に理解し、適切な印刷設計を思い描く判断力が求められます。

熊倉は、「好きな人を口説くとき、一生懸命に手紙を書くものだ。だからこそ、ディレクター自身もラブレターを書くつもりで仕事に取り組むことが大切だ」と語っていました。
この精神は現在も受け継がれ、熊倉の技術を継承する6名のプリンティングディレクターはもちろん、現場のオペレーターにもその想いが根付いています。偉大な存在であった熊倉を失った今もなお、彼の精神は生き続け、成長し、ものづくりの原点として大切に守り続けています。
▶コラム/熊倉と社員のエピソード
+砂金のバラッド
ー熊倉の功績にふれるー
◯印刷5大要素を知る
◯デジタルアートプリント「Solegraph(ソルグラフ)」について
◯熊倉追悼本
◯PD日記